●『生命保険の解約返戻金を受け取った時、税金ってかかるの?』
●『税金はどう計算すればよいの?』
●『解約返戻金の損をしない受取り方があるなら知りたい』
一時所得とは?
一時所得の概要
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
一時所得には次のようなものがあります。
●懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
●競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます。)
●生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
●法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます。)
●遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
※国税庁HPより

個人(第三者)が法人から贈与により取得した財産は一時所得とされ、贈与税は非課税とされています。役員や従業員の場合は賞与とみなされます。
一時所得の税金について
一時所得の課税所得は以下の式で算出されます。
総収入金額–収入を得るために支出した金額–特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
また、上記で算出された一時所得の金額は、その金額の1/2に相当する金額を、給与所得などの他の所得の金額と合計して総合課税されます。

年末調整を行う給与所得者の場合、一時所得の合計額の2分の1が20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。

医療費控除、寄付金控除、雑損控除などは年末調整で控除されませんので、これらの控除の適用を受ける場合には、一時所得が20万円以下でもそれを含めて確定申告を行なう必要があるのでご注意ください。
収入を得るために支出した金額とは?
一時所得の経費は、その収入を生じた行為をするため、または、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限り認められます。
競馬であれば払戻金を受けたそのレースの馬券の購入金額のみが「収入を得るために支出した金額」に該当します。
生命(損害)保険契約等に基づく一時金、満期返戻金等であれば、「収入を得るために支出した金額」は、保険料または掛金の総額となります。

一連の馬券の購入が営利を目的とする継続的行為と認められたことで、「雑所得」となり外れ馬券の購入金額は必要経費とされたという判例も存在します。(最高裁平成29年12月15日)
生命保険の解約返戻金を課税されずに受け取る方法
それでは生命保険の解約返戻金の受取を具体例にとって考えてみましょう。
支払った保険料の総額が1000万円で解約返戻金が1450万円の生命保険契約があったとします。
この契約の解約を一時所得の計算式に当てはめると以下のようになります。
1450万円-1000万円-50万円=450万円(一時所得の金額)
450万円×1/2=225万円(課税所得)
この場合225万円が給与所得などの他の所得と合計して総合課税されます。
そこで、この解約返戻金を課税されずに受け取る方法があります。

この方法はもちろん合法であり、下記2つの仕組みを知っていればごく当たり前の話です。
❶個人の課税期間は1月1日から12月31日までであること。
❷生命保険契約には部分解約という仕組みがある(保険金の減額)こと。
課税期間の年度を繰り越せば、一時所得の特別控除50万円をまた使えるようになるので、利益の金額(特別控除の50万円を差し引く前)が90万円(20万円÷1/2+50万円)を超えない範囲で生命保険契約を年度ごとに部分解約すればよいということです。
それでは、先程の例に当てはめて考えてみましょう。
利益の金額90万円以内に抑えるので、450万円÷90万円=5となります。つまり5年間に分けて年度ごとに部分解約していけばいいのです。解約返戻金は1450万円÷5年で290万円、保険料は1000万円÷5年で200万円となります。
290万円-200万円-50万円=40万円(一時所得の金額)
40万円×1/2=20万円(課税所得)

年末調整を行う給与所得者の場合、一時所得の合計額の2分の1が20万円以下であれば、確定申告の必要はありませんでしたね。
もし課税所得を“0”にしたい場合には利益の金額(特別控除の50万円を差し引く前)を50万円にすればよいですね。その場合は450万円÷50万円=9となります。つまり9年間に分けて年度ごとに部分解約していけばいいということになります。

特別なことは何もありません。知っているか知っていないかだけのことなのです。