世界1500万部突破の名著「人を動かす」自ら動きたくなる気持ちを起こさせる方法とは?

ビジネスネタ

世界中で1500万部以上も売れたベストセラー「人を動かす」。この本には、どうすれば人を動かすことができるか、そして人々が持つ根本的な欲求について、興味深い洞察が語られています「こちらの意図が相手にうまく伝わらない…」「もっと人に気持ちよく動いてもらいたいのに…」本記事では、デール・カーネギーが説く人を動かす秘訣のエッセンスを解説していきます。

| 盗人にも五分の理を認める

どれだけ凶悪な犯罪を犯していようが、自分は悪人ではないと考える犯罪者は、決してめずらしくありません。かつて、全米を震え上がらせた暗黒街の王者アル・カポネであっても、自分のことを悪人だとは思っていませんでした。それどころか、自分は慈善家だと大まじめに考えていました。このような極悪人でさえも、自分が正しいと思い込んでいるとすれば、彼らほどの悪人でない一般の人間が自分のことをどう思っているでしょうか…?

人間は、基本的に自分の非を認めることを快く思わず、他人からの非難を恐れ、また他人からの賞讃を強く望むものなのです。およそ人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならないのです。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねばなりません

| 重要感を持たせる

人を動かす秘訣は「自ら動きたくなる気持ちを起こさせる」ことです。人間の持つ性情のうちでもっとも強いのは、「他人に認められることを渇望する気持ち」です。世界的大富豪のアンドリューカーネギーの大成功の鍵は、公私いずれの場合にも人を褒めたたえたところにあります。どんなに地位の高い人でも、小言を言われて働くときよりも、褒められて働くときのほうが、例外なく仕事に熱がこもり、出来ぐあいもよくなるものなのです。嘘でない心からの賞讃を人に与えてみましょう。相手の自己評価にぴったり合うことを言ってやることが大切なのです。

| 人の立場に身を置く

人を動かすもう一つの方法は、「その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてあげる」ことです。そのためには、「常に相手の立場に身を置き、相手の立場から物事を考える」ことが重要です。著書の中でも紹介されている運送会社の輸送係長から送られた手紙の事例を見てみましょう。

拝啓 当方の現状について申し上げますと、取り扱い貨物の大部分が、夕方近く一時に殺到しますため、とかく発送業務に支障をきたしがちでございます。結果は、当方人員の時間外労働、積込みおよび輸送の遅延となります。去る11月10日貴社から500個に及ぶ大量の貨物が届きましたが、そのときはすでに16時20分でございました。当方といたしましては、このような事態によって生じる不都合を避けるため、あえて貴社のご協力をお願いする次第でございます。前記のごとき大量の貨物は、到着時刻を早めていただくか、または午前中にその一部が届くようご尽力ください。右のごとくご配慮いただければ、貴社のトラックの待ち時間も短縮され、貨物も即日発送されることとなります。 敬具

この手紙を受け取った側の感想は次のとおりでした。

「この手紙は、その意図とは逆の効果を生じる。冒頭から自分の都合を書いているが、だいたい、こちらはそんなことには興味がない。次に協力を求めているが、それから生じるこちらの不便はまるで無視している。ようやく最後の節で協力すればこちらにとっても利益があると言っている。肝心なところがあとまわしになっているので、協力どころか敵愾心を起こさせる。」

では、この手紙はどのような内容で書くべきだったのでしょうか?

拝啓 弊社は、14年らい貴社のご愛顧を賜り、深く感謝いたしますとともに、いっそう迅速かつ能率的なサービスをもってご愛顧にむくいたいと心がけております。しかしながら、去る11月10日のごとく、午後遅くに一度に大量の貨物をお届けいただきますと、残念ながら、ご期待にそいかねる場合がございます。と申しますのは、他の荷主からも、午後遅くには、荷物が届きます。当然、混乱が生じ、貴社のトラックにもお待ち願わねばならず、ときには積出しの遅れる場合があります。これでは、まことに遺憾にたえません。このような事態を避けるには、おさしつかえなきかぎり、午前中に貨物をお届けくださることも一法かと考えます。そうすれば貴社のトラックにお待ちいただく必要もなく、貨物は即時積出しが可能になり、また、当社の従業員も定時に家庭に帰り、貴社製の美味なマカロニの夕食に舌鼓を打つことになりましょう。申し上げるまでもなく、貴社の貨物ならば、たとえ何時に到着いたしましても、できる限り迅速に処理いたしますよう、全力を尽くしますゆえ、その点、何卒ご安心ください。ご多忙と存じますので、ご返事のご配慮無用に願います。 敬具

受け取る印象がだいぶ違うはずです。相手の立場に身を置いて、相手の立場から物事を考えることの大切さが分かるでしょう。

| 誠実な関心を寄せる

大勢と一緒に自分が写っている写真を見るとき、われわれは、まず最初に誰の顔を探すでしょうか?誰であっても、まずは自分の顔を探すはずです。人間は、朝も、昼も、夜も、最も関心があるのは自分のことであり、他人のことには関心を持ちません。相手の関心を引こうとするよりも、相手に純粋な関心を寄せるほうが、はるかに多くの知己が得られます。こちらが心からの誠実な関心を示せば、どんなに忙しい人でも、注意を払ってくれるし、時間も割いてくれ、また協力もしてくれるものなのです。

| 参考文献

(著者)D・カーネギー|(書名)人を動かす|(出版社)創元社|(出版年)1999年