世界を新鮮に感じ直す方法 | Kenya Hara | TEDxUTokyo

SPECIAL

たとえば、人間は四角を創造することを好みます。起伏のある土地を四角に区画し、そこに四角の建物を建て、四角い家具や四角いパソコンで仕事をしています。同時に「もし人間がミツバチのように六角形を好んだりしたら」という問いを立て、思考することもできます。「だったりして」という問いをたてる力がクリエイターには求められているのです。

| デザインの再考

デザインはしばしば、日常に溶け込む製品や建築、あるいは目に見えない遺伝子操作に至るまで、あらゆるものを形作る要素として語られます。しかし、この広範な用途にもかかわらず、デザインの真の意義やその本質について深く掘り下げる機会は少ないのです。デザインとは、単に物事を美しく見せるための手法ではなく、より根本的な本質を見極め、それを可視化する営みと言えるでしょう。

| 人間による環境のデザイン

人間は唯一、自らの住む環境を意図的に変容させてきた生物です。自然界には存在しない四角い形状を好んで使用し、建築や日用品に至るまでこの形状で溢れています。しかし、この四角いデザインの選択は、人間の感覚器官の左右対称性や、立つという行為による垂直・水平への意識から来ているのかもしれません。自然界では有機的な形状が主であり、人間が四角形を好むのは、手の使用法や、自然に対する理解から生まれた結果と考えられます。

| デザインの意義とは

デザインの根底にあるのは、環境や物との対話です。例えば、球技の進化は、球体が真球に近づく科学技術の発展と密接に関連しています。このような過程を通じて、人間は無意識のうちに自然の摂理や宇宙の原理を体得していきます。デザインは、ただ物を美しく見せるだけでなく、私たちの世界との関わり方、それをどう認識し理解していくかに深く関わっているのです。

| 日常に潜むデザインの可能性

「リデザイン」展や「建築家たちのマカロニ展」のようなプロジェクトは、日常的な物品に新たな価値を見出す試みです。これらのプロジェクトは、デザインが持つ可能性を示唆しています。トイレットペーパーやマッチ、マカロニなど、一見するとありふれた物も、デザインを通じて新しい意味や価値を持ち得るのです。デザインは、私たちが日常をどのように理解し、どのように世界と関わっていくかを根本から変える力を持っています。

| デザインとクリエイティビティ

デザインの真髄は、世界を新鮮な眼差しで見つめ、その本質を可視化し、理解を深めることにあります。日常の中で見過ごされがちな物事に対する新たな視点を持つこと、それがクリエイティビティです。デザインを通じて、私たちは常に世界と対話し、その中に新しい意味を見出すことができます。世界というのはちょっと頬杖をついただけで違って見えてきます。論理や経験則ではなく「だったりして」。世界を新鮮に見立てていく技術をクリエイティビティと言います。これからも、私たちはデザインの力を借りて、周囲の世界を豊かにし、新しい可能性を探求していくことでしょう。