最高のコーチは、教えない。|"プロ"を育てる超一流コーチングとは?

最高のコーチは教えない
The best coaches don't teach.
今回は、日本球界はもちろん、メジャーリーグでも活躍した吉井理人氏の著書『最高のコーチは、教えない。』の要点を解説します。吉井氏はダルビッシュ有や大谷翔平など、数々の超一流選手を育て上げたことで知られ、彼のコーチングスタイルはビジネスの世界でも学ぶべき点が多くあるでしょう。
コーチングの本質

コーチングとは、答えを与えるのではなく、相手に考えさせることで真の成長を促す指導法です。いまだに広く行われている強制的な指導は本来の目的を見失わせ、ただのミスの指摘は選手の自尊心を傷つけるだけに終わります。日本の伝統的な師弟関係や、命令と従う関係性ではなく、質問を通じて相手自身が答えを見つける過程を大切にします。これは、変化し続けるビジネスの世界で特に重要なアプローチとされ、革新的な成長を促す鍵となるでしょう。
コーチングの実践方法

コーチングを実践するための具体的なステップとして、「自己採点してもらう」「宣言してもらう」「相手に憑依してコメントする」という3つの手法が紹介されています。これらのステップを通じて、部下や後輩が自身の成長を自らの力で促進できるように導きます。吉井氏の経験からも、言語化の能力が高い選手ほど大きな成長を遂げることが分かります。
自己採点してもらう

このステップでは、部下や後輩に自分自身の行動や成果を振り返り、自己評価を行ってもらいます。具体的には、マンツーマンの面談を設け、その中で彼らに以下の点について語ってもらいます。
- 成功した点は何か?
- 失敗した点は何か?
- その要因は何だったのか?
この自己反省のプロセスを通じて、彼らは自分の行動を客観的に見つめ直し、自身の強みと弱みを理解する機会を得ます。また、このステップは彼らが自分の言葉で考えを表現する力、すなわち言語化の能力を養うことにもつながります。
宣言してもらう

自己採点を通じて現状を把握した後、次は部下や後輩に今後の目標や計画を「宣言してもらいます」。ここで重要なのは、彼ら自身が自分の目標を声に出して言うことです。人は自分で口に出した目標に対して、より強いコミットメントを感じる傾向があります。このプロセスでは、具体的な行動計画を立てることも重要です。目標を実現するために、具体的に何をどのように改善し、何を行うべきかについても話し合います。このステップは、自発的な目標設定と自主的な計画立案の能力を育てることを目指しています。
| 相手に憑依してコメントする

コーチングにおいては、部下や後輩をただ導くだけではなく、彼らの立場や感情に深く寄り添うことが求められます。「相手に憑依してコメントする」ステップでは、その人が直面している課題や状況をできるだけ深く理解し、その上でアドバイスを提供します。ここでは、「自分だったらどうするか?」ではなく、「その人が今の状況で最も効果的に行動するためにはどうすればいいか?」を考え、提案します。これには、部下や後輩の個性、強み、弱み、そして彼らが目指す目標を十分に理解することが必要です。彼らの視点に立ち、彼らにとって最適な解決策を一緒に考えることが、このステップの鍵となります。
コーチングの誤解と真の目的

コーチングには誤解されがちな点がいくつか存在します。選手とコーチはどれほどの信頼関係を構築しても友達になるべきではないと言います。なぜならば、両者の間には社会的な力関係が厳然として存在しており、その「のりしろ」を空けておかないと、言わなければならないことが言えなくなるからです。また、経験が浅い新人に対しては、必要に応じてティーチングが適切であることも指摘されています。コーチングの真の目的は、相手が自立して成長できるように導くことにあるのです。