独自性は「電話したらすぐ来てくれる」即日対応にあり!その独自性が引き起こした内部不正からの復活劇
独自性は即日対応
Uniqueness is immediate
飲食店を支える業務用厨房機器を製造販売するホシザキ株式会社。2018年に販売子会社で不適切会計が発覚し、上場廃止の危機から、ガバナンス強化と事業成長を見事に成功させた。今回は愛知県豊明市に拠点を構える隠れた巨人、ホシザキ株式会社についてリポートする――。
飲食店の冷蔵ケースや業務用冷蔵庫に目を向けると、目に入るのは「HOSHIZAKI」のロゴだ。飲食店にとっては業務運営に欠かせない存在となっているのが、ホシザキの製品である。国内市場では、製氷機の6割、業務用冷蔵庫や食器洗浄機の4~5割、生ビールディスペンサーは7割もの圧倒的シェアを握っているのだ。24年12月期の売上高は4100億円、営業利益は440億円に達している。
1947年に創業したホシザキは、ミシンの部品製造やジュース自動販売機などを手掛ける会社であったが、自社製品としての将来性を測りかねて、現会長で創業者の息子であった坂本精志氏が米国に視察に出かけた。そこで知り合った米国人から「社会がぜいたくになればなるほど必要になるのは水と紙、そして氷だ」と言われた。その言葉を胸に始まったのが製氷機開発だったのだ。
では、どうして業務用冷蔵庫と言えばホシザキとまで言われるようになったのだろうか。それは、「電話したらすぐに来てくれる」という一点に尽きる。ホシザキは、直販を強みとしており、全国に15の販売子会社を持ち、その傘下に営業や保守を担う約430もの事業所を持っているのだ。営業や保守に当たる人員は6000人ほどと、連結社員の約45%を占めるのだ。他社製のものが壊れた際には、「修理に3~4回、計1ヶ月かかった」という話もある。圧倒的に素早い保守対応がホシザキの唯一無二の独自性となって、現在の圧倒的シェアを実現していると言えるのだ。
ただし、その独自性が裏目に出た過去がある。2018年に販社で、営業担当者による水増し発注が発覚したのだ。これは、営業会社でおこりがちである営業ノルマ達成のプレッシャーから生じたものだった。売上高至上主義が、営業部への過度な権力主集中を招き、管理部門によるガバナンス不全をも引き起こしていたのだ。
一連の不正を受けてホシザキは、執行役員制度を導入し、社外取締役の比率も増やした。また、売上市場主義から脱却すべく、販社の目標管理制度や人事制度も見直した。営業担当者の過度な定量評価を見直し、3割を定性評価に変更した。このようなガバナンス改革を次々に着手しながら、過去最高益を達成したホシザキから学べることは多いだろう。