カイロスロケット爆発、 夢の先に見え隠れする営利企業としての重責

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宇宙への挑戦は人類の夢と野心を象徴しています。その最前線で戦っているのが、スペースワン社です。同社は、2024年3月13日午前11時1分に「カイロスロケット」の初号機を打ち上げましたが、計画通りに進まなかったことを、3月13日の公式プレスリリースで明らかにしました。

| ミッションの途中で見せた決断

このミッションは、和歌山県の「スペースポート紀伊」からスタートしました。しかし、リフトオフからわずか5秒後、ロケットは爆発し、射場周辺には破片が散乱しました。これにより、ミッションは予定されたステップ2には進めず、飛行中断処理が行われました。ロケットの異常を感知し、より大きな災害を防ぐための迅速な決断が下された瞬間でした。

| 失敗を糧に、さらなる飛躍へ

スペースワン社の豊田正和社長は、この事態を「失敗」とは呼ばず、「挑戦の糧」と位置づけています。同社には、「年間20機の打ち上げ」という野心的な目標があります。投資フェーズにあるとはいえ、スペースワンは営利企業として主要株主や顧客の責任を果たす必要があります。

| 世界をリードする宇宙産業への挑戦

スペースワンは、「契約から打ち上げまで世界最短」を掲げ、宇宙産業の新たな標準を作り上げようとしています。この速さは、同社が市場で差別化するための重要な要素であり、ギリシャ神話の神「カイロス」から名付けられたカイロスロケットには、「時間を味方に付けて市場を制する」という意志が込められています。

スペースワンについて:
キヤノン電子、清水建設、IHIエアロスペース、日本政策投資銀行の4社が出資し、2018年7月に人工衛星を搭載する小型ロケットの開発から打ち上げまでを手がける企業が設立されました。和歌山県串本町に自社で運営する「スペースポート紀伊」というロケット発射場を設け、打ち上げ事業を行います。この事業は、固体ロケットの即応性、コスト効率、信頼性、そして機動性を活かし、小型衛星向けの商業宇宙輸送サービスを展開することを目的としています。

スペースポート紀伊は日本国内で3番目のロケット発射場であり、これまでのJAXAが所有する種子島宇宙センターと内之浦宇宙空間観測所に次ぐものです。民間企業による宇宙ビジネスの参入が進まなかったのは、法的な整備が進んでいなかったことと、民間の打ち上げ需要が低かったからです。しかし、2018年11月に「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)」が施行され、企業の宇宙活動に関するルールが整えられました。小型衛星への需要が増加している中、スペースワンが新たな射場を建設し、輸送サービス事業へと参入しました。宇宙産業界内では、スペースワンの成功が将来の日本の宇宙ビジネスに大きな影響を与えると見られています。

| 次なる一歩への期待

東京大学の中須賀真一教授は、この挑戦に対し、素早いリカバリーと次の成功に向けた努力を促しています。今後、スペースワンは原因究明と対策の立案を進め、事業化への道をさらに加速させることが期待されています。この一件が、宇宙への道を切り拓くための貴重な経験となり、新たな歴史を築く第一歩となって欲しいものです。