孫正義氏の講演は、テクノロジーの未来とその中心にある人工知能（AI）についての深い洞察を提供した。彼が描く未来は、技術進化の波に乗り、人類がこれまでに経験したことのない速度で変化する世界の姿である。孫氏は、AIの発展が私たちの生活、働き方、さらには社会の構造そのものを根本から変えると強調し、この大変革の核心に「汎用人工知能（AGI）」があることを示した。

| 金魚のエピソード

10年以内に、AGI（汎用人工知能）は人類の知能を少なくとも10倍上回ることになる。これは、ほぼ全ての分野で人類の知能の10倍に達するということを意味しており、この流れはこれからも進み、人間と猿の知能の差を超え、人間と金魚の間の知能のギャップに匹敵するほどになると言われている。金魚の脳細胞（ニューロン）の数は、人間の1万分の1に過ぎず、それくらいの差がこれから先の未来に生まれると言われているからだ。

| AIと人類の未来

将来的に、人類の1万倍のレベルの知能を持つAIを「アーティフィシャル スーパー インテリジェンス（ASI）」と呼び、もはや現在のAGIの枠を超えることになる。ASIの出現は、人類がこれまでに経験したことのない変化をもたらし、今までの小さな議論や差異は意味をなさなくなる。

この変化に対して、我々はどのように対応すべきか、そしてどのような準備が必要かが問われている。テクノロジーの急速な進化に伴い、受け入れるか拒否するかの選択が、個人や社会に大きな影響を及ぼすようになる。AIを活用し、その恩恵を最大限に受けることができるか、それとも技術の波に取り残され、金魚のようになるのか、これは私たち一人ひとりの意識と行動次第なのだ。

| AGIの実現への道

AGIが人類の知能を超える日はもはや遠い未来の話ではなく、孫氏はその実現を10年以内と予測する。この進化の速度に対応するため、私たちは今、技術への理解を深め、倫理的な使用を考慮し、そして未来への準備を始めるべき時であると強調した。

また、人類の進化とは、願望から生まれるものであり、空を飛びたい、速く走りたい、病気を治したいという願望が技術革新を推進してきた。AGI、そしてASIの時代が到来したとき、それを最大限に活用できるかどうかは、私たちが持つ願望の強さにかかっている。地球を守りたい、優れたアーティストになりたいといった強い願望を持つ人々が、この新しい技術の時代をリードしていくことだろう。AIは敵ではなく、私たちの最強のパートナーであり、私たちはこの進化の波に乗り、取り残されることなく、新しい未来を共に創造していくべきなのだ。